【立て直す力:上田紀行著】を読む

【立て直す力】上田紀行著:中公新書ラクレ

【立て直す力】上田紀行著:中公新書ラクレ(右写真)より、印象に残ったくだりを紹介します。

… 自由と支えはコインの裏表です。自由に生きるためには、自分の中に絶対的な支えが必要なのです。私を支えてくれるものがあるというある種の確信のようなものが、人間の自由を支えるのです。人生が破綻しても、ひどく落ち込んで死にたくなったりしても、無条件に支えてくれる存在がある、ということが人生へのチャレンジを後押しするのです。 … P76

… … 常に、いまここにいるということの意義が未来の目的を達成するためなのだと、常に「目的への疎外」を経験することで、私たちはいまを楽しめなくなっていきます。いまアリとして生きていく、その目的を達成する生き方をすると、こころから楽しめる時間は非常に少なくなってしまうのです。 … P151

… 本来、人間というものはとてもフラジャイル〈fragile:壊れやすい〉な存在であること、傷つきやすいものだということを再認識してほしい。だから癒したり、ケアしたりする手段は必ず持っておかなければならないのです。 … … お金の計算と同じくらい大切なことです。つまり、エクストラ(特別)なものではなくてエッセンシャル(必須)なものなのです。 … P158~159

… 智〈知恵〉は悲〈慈悲〉に属して動かなくてはならぬ。智は悲によってその力を持つのだということに気づかなくてはならぬ。ほんとうの自由はここから生まれて出る。 … P205
著者〈上田氏〉が鈴木大拙の言葉より引用

著者:上田紀行氏について
・文化人類学者,医学博士,東京工業大学教授,リベラルアーツ研究教育院長
・86年よりスリランカで「悪魔祓い」のフィールドワークをおこない、その後「癒し」の観点を提示するとともに現代社会への提言を続けている。