【こころの旅:神谷美恵子著】を読む

【こころの旅】神谷美恵子著:日本評論社

【こころの旅】神谷美恵子著:日本評論社(右写真)を読んで印象に残ったくだりを紹介します。

① … 自発性によって独学能力と思考能力を身につけることが、一生のこころの旅をゆたかにするもっとも大切な鍵であろう。どこにおかれても一生ひとりで学びつづけられる人をつくるのが学校教育の目的であるとさえ私は思う。 … P78

② … 青年の多くは一時的に芸術家になるといえよう。この審美的傾向を人間が一生持ち続けられるならば「生きがい」の強敵の一つである「退屈病」からまぬがれることができるのに、どうもこれは例外に属することらしい。中年になると大部分の者は現実に密着する傾向がある。 … P102~103

③ … … 「自分は何ものであるか、自分はどこにどう立ち、これからどういう役割と目標にむかって歩いて行こうとするのか」をみきわめなくてはならないという。アイデンティティとは訳しにくいことばで自己同一性などと訳されてもあまりピンと来ないが、その意味する内容は上のカギかっこの中にある。  P108~109

④ … 生まれた以上、育てられた以上、自分に与えられた時間を精一杯生きてきた。その時間をできるだけ充実させ、他の人々も手をたずさえて、なるべく「よく」生きようとは努めてきた。しかし、自分の一生には多くの「若気の至り」やあやまちや、「もっとよくできたはず」のこともあるだろう。 … … 自分こそ、自分の一生が決して完全無欠なものではないことを知っている。 … … それにもかかわらず、今まで人間として生きることを許され、多くの力や人によって生かされてきた。生きる苦しみもあったが、また美しい自然やすぐれた人びとに出会うよろこびも味わわされた。そしてこれからも死ぬときまで許され、支えられて行くのだろう。 … P177

上記
①について
同感です。退職してからとくにそのことを強く感じました。
②について
審美的傾向を持っていれば、人生が彩られ、また、いっそう潤うようにも思います。
③について
アイデンティティ確立については、本の中では、思春期特有の課題として取り上げられていますが、
… 私の場合、定年退職後から今日に至るまでの課題でもあります。
④について
〈おこがましいのですが〉私もそのように思っています。
癒されました。ありがとうございます。

定年退職前後に、定年に関する本を数十冊読みました。

最初に【こころの旅】を読んでいれば、それらへの理解がより深まったように思われます。