【淋しいアメリカ人】桐島洋子著:文藝春秋(右写真)を読んで、印象に残ったくだりを紹介します。
… 空気の汚染も老醜の促進に無関係ではないだろう。しかし、より強烈な作用で人間を蝕むのは、無関心という毒であるように思われる。 … P107
… 労力や時間の節約もさることながら、テレビの貢献度がもっとも大きいのは思考力と想像力の節約である。思考力も想像力も節約すれば節約するほど退化するものだから、人々にはもうその危険に気づくほどの思考力も想像力も残っていない。 … P151
… 無内容はなにも今に始まったことではないし、また、アメリカだけのことでもないが、物質文明の最先進国としてこれまでにない人間の自由を獲得したために、その自由の使い道を知らない貧しさを、にわかに露呈することになったのだろう。 … … 無内容な人間は救いようもなく薄っぺらに透き通る。 … P153~154
… 車はまさしくアメリカ人の自由の象徴である。そして車はまたアメリカ人の不自由な象徴でもある。身動きのならないラッシュ時のフリー・ウェイ、交通事故による人間の損傷、排気ガスの公害、月賦と維持修理費とガソリン代に追われる家計 … … 。 P168
【淋しいアメリカ人】は、著者〈桐島氏〉が、アメリカで見聞きしたことをまとめた本である。
… 50年ほど前に …
氏は、あとがきで「偏見にみちた個人的印象記」と言っているが、
偏見どころか、むしろ普遍性があるようにさえ感じらる。
上記のくだりは、今では、アメリカだけでなく、その他の国にも当てはまると思われる。
私もその他の国に住んでいる一人で、例外ではない。