【未来者たちに】高橋睦郎著:みすず書房(右写真)を読んで、印象に残ったくだりを紹介します。
… なぜ風景を捨てたのかといえば、風景はそのままではお金にならず、腹の足しにならないからだろう。お金になり、腹の足しになるもののことを資源という。その意味では風景は資源ではない。しかし、長い目で見れば風景は直接的資源以上の資源なのではないか。自然への感受性を育て、他者への親和力を哺〈はぐく〉むからである。 … P25
… 人に負けまいとして他に抜きん出ても、そこに本当の喜びはない。勉強にしても、仕事にしても、そのことじたいが好きで打ちこめたら、他に勝ろうと劣ろうと、それこそが倖せではないだろうか。
… P49
… 宗教の中の神道の独自性は一木一草、風や水や岩にまで霊的なものの存在を実感することで、これは他のどんな宗教よりも人間の原感覚に沿っている、と思われる。 … P69
… 努力し努力し続けた結果が充実した老いをもたらしたのであって、努力しなかった人が急に充実した老いに至ることはありえない。
では熱中を知らず努力しないまま老いを迎えた人はどうすればいいのか。その時点から熱中することを見つけ、生きる努力を始めることだ。人生は死に至るまで努力するに値するし努力することでさらに価値あるものになることを、先人たちは教えてくれている。 … P105