【人生まだ七十の坂】小島直記著:新潮文庫(右写真)を読んで印象に残ったくだりを紹介します。
… 〈森〉鷗外さんが陸軍という組織の中にいて、非文学的な処世術を使ったところにもとがあった、というほかはありません。早く陸軍を去ればよかったのです。それをいやいやながら、山県〈有朋〉さんなどにお世辞をいいながら定年までつとめて、軍医としての最高の地位を占めておいて、死ぬ間際になってそのことでグチをのべ、ダダをこねる。遅すぎるし、女々しすぎる。〈正岡〉子規さんの 「月給40円」の方がはるかにいさぎよく、男らしい、というのが二人の「遺言」から見た私のいつわらぬ感想なのです。 … P123
… 「『技術者はつぶしがきく。第二の人生のためには、何か専門の技術を身につけておくべきだ』とは、よく耳にする言葉である。
だが、その通念にとらわれることはない。それは、老後をまず『器』や、『受け皿』の問題として考えることに似ているからである」
「かんじんなのは、前向きに生きる情熱である。情熱があって、技術は後からついてくる」 … P147
※ このくだりは、【人生余熱あり】城山三郎著 より、著者〈小島氏〉が引用したものです。
… 何かを捨てなければ、見えないもの、つかめないものが人生にはあります。何もかも、というパーフェクト・ゲームは人生にはないのです。問題は、何のために、何を捨てるかだ、ということをこのエピソードは教えていると思います。 … P199
※ このエピソードとは、電力の鬼と言われた松永安左エ門が死の直前に『不失恒心 不守恒産』の書をしたため、ある出版人におくったという話です。
久々に小島氏の著書を読み〈三読目?〉、身も心も引き締まる思いです。
懐かしくなり、物置から氏の他の著書【出世を急がぬ男たち】を引っ張り出してきて読んでいる〈再読〉ところです。
読了後、紹介いたします。