【出世を急がぬ男たち】小島直記著:新潮社(右写真)を読み、印象に残ったくだりを紹介します。
… いかなる分野にあっても、しろうと臭さの証拠はことの成行が苦しくなったとき狼狽することである。プロの特徴は、緊急時における有能さであり、軍人としての技術はほとんど全面的に、五里霧中の戦闘時にあって的確な判断をくだすところにある。 … P21
※ 第2次大戦時のドイツのフォン・ルーン将軍の言葉を引用
… 向学心は学校で賞賛される最大の美徳で、野心に裏づけられた努力さえあれば道はひらけるというすすめは、不安定なサラリーマン子弟の多い土地柄では現実的であった。しかしその雰囲気は、周囲の自然を手ごたえたしかな実在とし、現在も自分の背骨にしっかりと存在するサムシングにしてくれる一番大事なものを、決定的に失わせた。 … P46
※ 中野孝次氏〈作家〉の言葉を引用
… 昔から日本人は学校を出ると本を読まない … … ほんとうに自分の心に響くところがあっての勉強でなく、有利な社会コースに乗るための、目先の手段としてだけの勉強という要因が多いのではないだろうか。 … P152
※ 渡部昇一氏〈英語学者〉の言葉を引用
… 定年延長は、働く意欲をもつ人への福音にちがいないが、大切なことは、そこにおいて果たすべきテーマを、定年前からもっていたかどうかであろう。新田〈次郎〉、杉山〈吉良〉の極北における格闘とその成果は、そのことを改めて考えさせてくれるのである。 … P237
※ 新田次郎:作家 , 杉山吉良:写真家
著書名【出世を急がぬ男たち】だけを見ると、勤め人を対象に書かれているように思われる。
が、定年した人にとっても読み応えのある本である。
再読してみて、小島氏の厳しさと温もりを改めて感じた。
勤めている人、勤めを終えている人、勤め以外の仕事をしている人、学生 … … etc.
どの人が読んでも、 ” 生涯学習 ” もっと広くいうと、 ” 生き方 ” の書になり得ると思っている。