【アメリカ素描】司馬遼太郎著:読売新聞社(右写真)を読み、印象に残ったくだりを紹介します。
… アメリカにおける自由は、この国の活力源であり、人類の希望の灯でありながら、しかし副作用として血まみれの犯罪を引きずって進み続けているのである。 … P149
… 法によって日本やフランスや韓国やデンマークなどができたのではなく、もともとそこに人間の組織があって、近代に入ったがために近代の法で再秩序づけされたにすぎない。
アメリカだけが逆だった。広大な空間を法という網でおおい、つぎつぎに入ってくる移民に宣誓させ、その法に従わせるということで、国家ができた。
つまりは、はじめに法があり、あとで人がきた。 … … P167
… アメリカという社会は、多分に法律用語としての「平等」の上に立っている。 … … 日本語の平等は、もともと法律用語でなく仏教語だったことを忘れるべきではない。 … P209~210
… 日本は完全な法治国家でありつつ、たいていのひとびとは、法のもとで江戸時代の農民のようであることをねがっているのではないか。文化のまにまに生きていくことによって、できるだけ法の厄介にならずにすませたい、と多くの日本人は考えているようである。
その点、メイフラワー号の始祖たちが最初に法によって個人を明確にし、政治団体をつくってそれへの忠誠を誓わせた国とはちがっている。法によって州ができ、州の連合国家をつくり、さらには法が元首の主人であるとしたこの人工国家にあっては、法という文明材――たれでも参加でき、普遍的なもの――を信ずることなしに生きてゆけない。
… P356
氏の日本に関する造詣の深さは誰もが知るところである。
その揺るぎない日本観を背景に、アメリカという国を鮮明に描いた感のする本である。
単に、アメリカの 法・自由・平等 等について知るだけでなく、日本におけるそれらを理解するにも好著である。
今回は再読となったが、今後、三読もありそう … 。