【人間この未知なるもの】アレキシス・カレル著/渡部昇一訳:三笠書房(右写真)を読み、印象に残ったくだりを紹介します。
… 年をとるにつれ、顔には一層全体的人間としての感情や欲求や抱負が豊かに現れてくる。青年の美しさは、生まれつき調和のとれた顔立ちによるものである。年をとった人の美しさは、その精神からくるものであり、きわめて稀である。 … P95
… 交感神経は、原始時代の危険や荒々しさに対しては、十分に器官を防衛していた。しかしそれは、現代生活の絶え間ない衝撃に対抗できるほど強くできてはいない。 … P132
… デカルトはこの抽象概念を実際のものと信じ、肉体と精神を異質のもの、二つの異なったものと考えた。そこに彼の誤りがあった。人間に関する人間の知識の歴史全体を通じて、この二元論は重くのしかかっている。これが精神と肉体の関係について、誤った問題を提起しているからである。 … P146~147
… 美的活動には美を創り出すことと、美について深く熟考することとがある。その活動には、まったく打算的な考えは含まれていない。創造の喜びに浸ると、意識は自分を離れて他のものに吸収される。
… P161
と、大半は肯ける内容なのです
… が、
… 正直で頭がよくて、よく働く人でも、生涯運が悪かったり、事業に失敗したり、一生低い地位でうだつが上がらなかった人の息子たちは、高い潜在能力を持つことが稀である。 … P320
のように突き放した物言いをしている箇所も散見されます。
【人間この未知なるもの】が初めて出版されたのは、1935年〈昭和10年〉。
当時は、 ” 優生学 ” の考えが、今と比べて色濃くあったとのこと。
時代のせいもあるのでしょうか。
※ アレキシス・カレル〈1873~1944〉
フランスの外科医・解剖学者・生物学者
1912年にノーベル生理学・医学賞受賞