ずっと雨続き。
【変わらないために変わり続ける】福岡伸一著:文藝春秋(右写真)を読み、印象に残ったくだりを紹介します。
… 科学と技術は違う。科学は、本来そんなに役に立たなくていいはずのもの。学者は文字通り、学ぶ者として、科学立国とか産業のシーズとかそんなことではなく、生命が本来的にもっている無限のやわらかさ、しなやかさの謎にただただ魅了されつづければよいのだ。 … P79
… きょうび、原稿はコンピュータで書いて、ネット経由で送り、ゲラのやり取りも全部メールでできる世の中。そうはいっても、やはり、ちょっと人恋しくなったとき、あそこに行けば誰かがいるはずという「いつもの場所」=エートスがあってもいいかなと。
… … そういう「いつもの場所」で、お酒を飲みながらたわいもない話をしているとき、それまで離ればなれになっていたヒントや記憶や言葉が初めてつながることがある。 … P151
… 商業的には単一品種を大量生産する大規模農業が推進されているアメリカだが、一方で、種の多様性を維持するため地道な努力が続けられているのだ。病害で現在種が打撃を受けるなど、いざというとき役に立つ。
隣の農園は、リンゴ品種の維持用フィールド。6千もの品種が栽培されているという。こういうところにアメリカの底力を見る。 … P182
… ips細胞だけが最先端科学ではないのである。あまり社交的ではなさそうな昆虫オタクたちが地面に這いつくばって(著者らは何度も通報や職質を受けたそうである)、1億年の進化の中で育まれた、最も驚くべき生物の社交性の実相を明らかにした。これもまた最先端科学であり、本書〈アリの巣の生きもの図鑑:The Guests of Japanese Ants〉は日本の文化的成熟度の到達点を示した好著である。
… P189
友人から、 ” 福岡伸一〈生物学者〉はおもしろい ” と聞き、氏の著書を読んでみた。
彼の言葉に間違いはなかった。
本書は、専門である生物学だけでなく、食文化、フェルメール〈画家〉等、多岐に渡って書かれていて、学術書というよりエッセイである。
生物学を極めた鋭い視点で、生物学はもちろんのこと、それ以外の分野に関しても、内容のレベルが高いにもかかわらず、平易な文章でとてもわかりやすくまとめられている。