午前中に台風11号の強風域に入りました。
前回のブログ記事で自慢げに紹介したアサガオ棚が、風にあおられて今にも倒れそうです。
こういうときに下手に外に出て直そうとすると事故になりますので、プレハブ内で見守ることにしました。
見守りがてら、以前より読んでいた【漱石を知っていますか】阿刀田高著:新潮文庫(右上写真)を読み終えました。
で、思ったことを紹介します。
現在の小説家〈阿刀田高〉が、100年以上も前に書かれた夏目漱石の小説について評価するという内容になっています。
評価対象になっている小説は、
①吾輩は猫である ②坊ちゃん ③草枕 ④虞美人草 ⑤三四郎 ⑥それから ⑦門 ⑧夢十夜 ⑨彼岸過迄 ⑩行人 ⑪こころ ⑫道草 ⑬明暗
です。
評価に至るまでの阿刀田氏の重層的なものの見方や考え方に、プロならではの力量がひしひしと感じられました。
各々の評価内容については、みなさんのほうで是非お読みになってください。
私こと
〈45年ほど前に〉上記①~⑬のうちで⑧の夢十夜を除き、ほか全部を読みました。
が、何しろそれから半世紀近く経っていますので内容はほとんど忘れてしまい、ただ楽しく読んだことを覚えていました。
今回阿刀田氏の著書を読んでいるうちに、おぼろげながら記憶が蘇ってきました。
と同時に、漱石のおもしろさを改めて知るところとなりました。
当時読んだ漱石の本は処分していないはず、頭が確かなうちに再度読みたく思っています。
最後に、阿刀田氏の著書で印象に残った箇所を紹介します。
… 総じて夏目漱石は、〈万葉集〉や〈源氏物語〉、いや、もっと古くからこの国に輝いた文芸の伝統と、新しくヨーロッパに咲いた小説という形式をどう融和させるか、それを具体的に創作して示した。それにふさわしい日本語のよい例をも示した。この点において後代に著しい宝物を残した文豪であった。まだ近代文学の揺籃期の気配が強く、小説の技法において巧みな人ではなかったが、残してくれた功績は、他を絶して見事である。この人なかりせば、日本の新しい文学はずいぶんと進展を遅らせたのではあるまいか、と私は思う。 … P463より