【人は成熟するにつれて若くなる】V・ミヒェルス編・岡田朝雄訳:草思社(右写真)を再読しました。
印象に残ったくだりを紹介します。
… 成熟するにつれて人はますます若くなる。すべての人に当てはまるとはいえないけれど、私の場合はとにかくその通りなのだ。私は自分の少年時代の生活感情を心の底にずっともち続けてきたし、私が成人になり、老人になることをいつも一種の喜劇と感じていたからである。 … P65
… 私の言っているような体験をするためには、やはり高齢であることが必要である。数知れないほどたくさんの見てきたものや、経験したことや、考えたことや、感じたことや、苦しんだことが必要なのだ。自然のひとつのささやかな啓示の中に、神を、精霊を、秘密を、対立するものの一致を、偉大な全一なるものを感じるためには、生の衝動のある種の希薄化、一種の衰弱と死への接近が必要なのである。 … P70
… 年老いてしまった者にとっては、もしも彼が何ひとつ目的となるものを見いださず、何ひとつ自分と自分の不安を超えるもの、絶対的なもの、あるいは彼がそれに仕え、それに仕えることだけが自分の人生に意義を与えるような神的なものを見いださなかった場合は、探求は迷い道であり、人生は失敗であったことになる。 … P91
20年ほど前に一度読んでいます。
今回改めて読み、ヘッセの人生に対する積極的な姿勢、人々への公正な視線などをいっそう知るところとなりました。
本著書に載せられているエッセイ等は、大半が、ヘッセが70歳を過ぎてから書かれたものです。
とくに私たち〈高齢者〉にとって、生きていく上で指針となる点が、多々あるように思っています。