【純粋機械化経済:井上智洋著】を読む 2

【純粋機械化経済】井上智洋著:日本経済新聞出版社

【純粋機械化経済 頭脳資本主義と日本の没落】井上智洋著:日本経済出版社(右写真)を読了しました。

前回に続き、印象に残ったくだりを紹介します。

… 日本をいまだに科学技術立国のように見ている日本人も多いし、文化や慣習が世界中から注目されていると錯覚している日本人も多い。日本は今まさに清朝末期の中国のように夜郎自大に陥っている。あるいは、落ち目であることに薄々気づいているが、だからこそ過去の繁栄にしがみつき、現実から目を背けているのかもしれない。 … P349

… 多くの経済学者が、よその国が劇的に生産性を上昇させたことによって、自国の経済が衰退するなどということはあり得ないと主張するだろう。ところが、自由貿易が常に国を豊かにするという学説もまた、ホモ・エコノミクス(経済人)の想定とともに、経済学者のコミュニティでしか通用しないおとぎ話にすぎない。 … P393 

… 今、知識創造性と知識利用性を高めるためになすべきことは、研究開発や教育に惜しみなく支出することだ。それは中枢としての政府の役割であり、民間任せにしていては十分ではない。
… … 財政難の日本にそれだけの支出をする余裕などないのではないかと考える向きもあろう。だが、そうした出し惜しみこそが、日本の失われた10年を20年と引き伸ばしてきたし、これから30年にまで引き伸ばすのである。 … P462~463

… ITは、雇用を奪い、格差を拡大させ、貧困を生むだろう。経済を成長させるにも、雇用なき世界で人々が暮らしていくにも、BIが不可欠だ。
… … AIとBIによる脱労働社会の到来は、私たちの社会が狩猟採集社会に回帰するということを意味する。未来の社会は、サイバネティックな狩猟採集社会(サイバー狩猟社会)となるのである。労働時間が短くて自由でノマディックな社会だ。 
ただ、狩猟採集社会にあった平等だけは放っておいても達成されない。平等な社会を実現するためには、中枢たる国家の役割がより重要となる。 … P472
※ 
BI:〈ベーシックインカム〉 最低限の生活を送るのに必要なお金を国民全員に給付する制度。例えば月7万円といったお金が政府から個人に配られる。

なお、2019年5月30日付日経新聞のAnalysis欄で、『人口減少社会の未来図〈下〉』の記事として、”  頭脳資本主義、数より質重視 ” というタイトルで、井上智洋氏の考えがコンパクトにわかりやすく紹介されています。

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