4日連続の雨天で、今日も読書 … 、
【「閑」のある生活】中野孝次著:新潮文庫(右写真)を読みました。
印象に残ったくだりを紹介します。
… 心を空〈から〉にして、鳥が鳴いたら鳥の声に耳をすまし、風が吹いたら風の行方を見る。そういうお金で買えない大きな世界がこの世にはある。 … P45
… そういう人口刺激物〈テレビ、ラジオ、パソコン、ケータイなど〉と四六時中かかわっていては、人は到底心の声、自然の声を聴くことができないと、君は知るべきだ。それなしでは心が空虚で、空虚な自分と向き合うのがこわさにすぐまたそれに戻るのだろうけれども、そんなことをしていては人は一生涯自分というものを受け入れることがないだろう。 … P74~75
… 僕は今年78歳になった。いかに平均寿命とやらが上がった現代でも、これはかなりの老齢といっていいだろうが、その長い一生を思い返してみて、ほんとうにいま自分のものとして残っているのは、若い時から好きで、これに生涯をかけようと思ったものだけであることに気づく。他のことは全部消滅した。 … P110
… 僕は年をとってからは新刊書はほとんど読まず、何よりも古今東西の定評ある古典が面白くなってそればかり読んでいる。あれやこれやに手をのばすより、ごく僅かの本を何度も徹底して読む方が、読書内容も濃く、言葉が心の中に根づく。自分の体験からこのことは自信をもって言える。 … P112
… 老子は「道〈タオ〉」といい、セネカは「自然」といい、趙州〈唐の禅僧〉や大梅〈唐の禅僧〉は「仏」といい、エピクテートスは「神」といい、名付け方は人それぞれにちがうが、永遠なる命を指すことでは同じだ。 … P141
… 人間が生きること、いかにしたらよく生きるかについて、また宇宙自然のこと、全世界の人間の営みのこと、社会のことについて、人が物事の根本から考えるのに一番役に立つのは読書だと僕は断言できる。 … P194
本書は、著者が最期を迎える直前に書かれたものです。
著者はそのことを予期していたのか定かではありませんが、文章の至るところ心に迫ってくるものが感じられました。
で、私は、読者への遺言とも受け取りました。