【人は成熟するにつれて若くなる】ヘッセ著 を読む

【人は成熟するにつれて若くなる】V・ミヒェルス編・岡田朝雄訳:草思社

【人は成熟するにつれて若くなる】V・ミヒェルス編・岡田朝雄訳:草思社(右写真)を再読しました。

印象に残ったくだりを紹介します。

 

… 成熟するにつれて人はますます若くなる。すべての人に当てはまるとはいえないけれど、私の場合はとにかくその通りなのだ。私は自分の少年時代の生活感情を心の底にずっともち続けてきたし、私が成人になり、老人になることをいつも一種の喜劇と感じていたからである。 … P65

… 私の言っているような体験をするためには、やはり高齢であることが必要である。数知れないほどたくさんの見てきたものや、経験したことや、考えたことや、感じたことや、苦しんだことが必要なのだ。自然のひとつのささやかな啓示の中に、神を、精霊を、秘密を、対立するものの一致を、偉大な全一なるものを感じるためには、生の衝動のある種の希薄化、一種の衰弱と死への接近が必要なのである。 … P70

… 年老いてしまった者にとっては、もしも彼が何ひとつ目的となるものを見いださず、何ひとつ自分と自分の不安を超えるもの、絶対的なもの、あるいは彼がそれに仕え、それに仕えることだけが自分の人生に意義を与えるような神的なものを見いださなかった場合は、探求は迷い道であり、人生は失敗であったことになる。 … P91

 

20年ほど前に一度読んでいます。

今回改めて読み、ヘッセの人生に対する積極的な姿勢、人々への公正な視線などをいっそう知るところとなりました。

本著書に載せられているエッセイ等は、大半が、ヘッセが70歳を過ぎてから書かれたものです。

とくに私たち〈高齢者〉にとって、生きていく上で指針となる点が、多々あるように思っています。

【知的生活:ハマトン著】を再読する

【知的生活】P.G.ハマトン著:渡部昇一・下谷和幸訳 講談社

【知的生活】P.G.ハマトン著:渡部昇一・下谷和幸訳 講談社(右写真)を読みました〈再読〉。

印象に残ったくだりを紹介します。

… 人との交際は、集団生活を送っていく上で、人それぞれに役割と地位があるためにどうしても必要です。しかし、孤独は個人としての生活を維持するために欠かせないものです。個人にとって交際が必要なのは、国にとって貿易が必要なのと同じことです。一方、言わば孤独は国民の家庭生活にあたり、そこで国民はそれぞれの独創性と才能を育むのです。 …
P303

… われわれが短気になるのは、おもに、自分の能力に対するアマチュアらしい不安感からきているのではないかと思います。この不安感には、仕事が完成するのを一刻も早く見たいという激しい焦燥感がつきまといます。 … P314

… 仕事こそ倦怠感に良く効く特効薬だと人は言いますが、着実に、一所懸命に仕事をしていながら、しかも常にひどい倦怠感に苦しんでいる人が大勢いるのです。その仕事が自分で選んだ自分の最も好きな天職であってさえもです。 … P318

… この30年を振り返ってみて、私が本当に無駄に費やしたと思う時間というのは、何か対外的に権威のあるものに汲々としながら従っていた時間だけのような気がします。 … P342

 

前回のブログ記事で紹介した5つのくだりも、上記著書からピックアップしたものです。

若い人向けに書かれた本ですが、高齢者にも十分に通用するような内容です。
〈40年ほど前に一度読んでおり、今回再読しました。〉

とくに定年退職して何かに打ち込みたいと考えている人には、大いに刺激になると思います。

他、

・【フロー体験 喜びの現象学】M.チクセントミハイ著・今村浩明訳:世界思想社
※ 2020.12.17付ブログ記事『今の私の心境に通じるものがあるのかな』参照

・【生きがいについて】神谷美恵子著:みすず書房
※ 2020.1.19付ブログ記事『【生きがいについて:神谷美恵子著】を読む』参照

もお薦めです。

2日続けてのサンタさんからの贈り物

終日ストーブの傍で本を読みました

昨日と打って変わっての悪天候。

晴れ間を縫って木立を回っていると、あられに叩かれる始末。

こんな日はプレハブに籠るのが一番。

終日ストーブの傍で本を読みました。(右写真)

印象に残ったくだりを紹介します。

 

… 神さまが飲む甘美なる酒と言えども、浜辺に打ち寄せる波の音や朝の澄み切った冷たい空気にはかなわないのですよ。 … P36

… 好きだという気持ちと能力の間にはある関係があるのであって、このことは、その好悪感が外的な事情から生じているのでなければ、充分信頼できることが多いのです。 … P71

… 知的生活をする者にとって、何よりもなくてはならない資質は、公平無私の精神であり、そのことには、いささかの疑念も入り込む余地はないと私は思います。… P73~74

… 人生は短く、時は矢のごとく過ぎ去り、今という時を上手に利用しなければならない … … … 何をやるかというよりも、何をせずにおくかということのほうが、はるかに重要なことが多いのですが。 …
P148

… お金を時間を守る楯として使い、お金のために時間を浪費しないことです。知性と意志という君主を守るボディー・ガードとして利用することです。 … P185

※ 著書名等につきましては、次回にお伝えします。

 

クリスマスの日に素敵な本を再読できました。

昨日は屋外作業の時間をたっぷりと、

そして、今日は読書の時間をこれまたたっぷりといただきました。

2日続けてのサンタさんからの贈り物でした。

今の私の心境に通じるものがあるのかな

【アメリカ彦蔵】吉村昭著:読売新聞社(左) 【フロー体験 喜びの現象学】M.チクセントミハイ著・今村浩明訳:世界思想社(右)

ここ一週間ほど悪天候が続き、ほとんど屋内で活動しています。

で、本を2冊読みましたので、印象に残ったくだりをそれぞれ一箇所ずつ紹介します。

 

【アメリカ彦蔵】吉村昭著:読売新聞社(右写真) P438~439より
… 彦蔵は、髪に白いものがまじり、顔面神経痛におかされて片側の頬がけいれんして口もとがゆがむようになった。 … … 彦蔵は洋服を排して、毎日着物を着て正座して日を過ごすようになり、筆を手にして一心に習字にはげんだ。日本には、外国にはない美しい伝統があり、日本人として自分もそれに従わねばならぬ、と心から思った。アメリカに帰化した身ではあったが、かれは折りを見て日本国籍を得たいと念じていた。 …
※ 彦蔵について
13歳のときに炊事係として廻船の乗組員となる。が、船が遭難し、漂流民となる。運よくアメリカ船に救われ、アメリカに行く。そこで、好意あるアメリカ人の世話になり、教育も受けることとなる。
ときは幕末。アメリカに帰化した彦蔵は身に付けた英語を生かし、アメリカと日本のパイプ役の一人として活躍。
上記に紹介したくだりは、彦蔵が第一線を退いた後の様子。

 

【フロー体験 喜びの現象学】M.チクセントミハイ著・今村浩明訳:世界思想社(右上写真) P216より
… 年齢とともに身体的活力が衰える場合、それは自分のエネルギーを外的世界の支配から内的現実に対するより深い探索に向ける準備ができることを意味している。それは人がついに――追求する価値があると心に決めたものであるならば――プルースト〔フランスの心理小説家〕を読み、チェスを始め、ランを育て、隣人に手を貸し、神について考えることができるようになったということを意味する。しかし若い頃に、孤独を進歩のために利用する習慣を獲得していない限りこれらのいずれを達成することも難しい。
この習慣は早くから育てることが最も望ましい。しかし、そうするのに遅すぎるということはない。 …

 

上記のくだりがとくに印象に残ったということは、

そこに、今の私の心境に通じるものがあるんでしょうな。

よい意味での道楽じいさんになるように

【無所属の時間】山本七平著:PHP文庫

本ブログサイトのタイトルは『無所属の時間』です。

定年退職後に職に就いたり何らかの組織に属したりしようという気がなく、

ブログ記事を書き始めようとしたとき、かつて読んだ山本七平氏の著書(右写真)名を思い出し、それをタイトルとしました。

ただ一部しか読んでいなく、それで、タイトルだけ真似るのはあんまりですので、今回全部読みました。
〈いつかは読了しようという思いでずっといました〉

P36から
… 日本の伝統的な道楽は、原則として一人である。一人で晦日の花をいけ、一人で茶をたのしみ、一人で盆栽の手入れをし、一人でじっと竿先の浮子〈うき〉を見、一人で骨董をなでる、そして、これに共通するものは、ある対象と対面し、それに投入することによって自己の中に他者として、無所属の時間を獲得している、という点であろう。そしておそらく、遊びの中に個を確保するという一つの生き方が、人間関係が複雑なわれわれの社会における「道楽」の基本形なのである。 …

 

現在私が日々行っている木立の手入れが、大いに当てはまりそうです。

今までは ” 楽しいから ” ” 性に合っているから ” という気持ちで木立の手入れをしてきたのですが、

… 「道楽」という言い方もできそうですね。

 

ということは、私は道楽者?

よい意味での道楽じいさんになるようにします。