【神谷美恵子聖なる声:宮原安春著】を読む

【神谷美恵子 聖なる声】宮原安春著:講談社

雨天続きで屋外作業ができませんので、ずっと読書をしています。

今日も神谷美恵子氏に関する本を読みました。

印象に残ったくだりを紹介します。

… … 精神分析の言葉に昇華(サブリメイション)という言葉がありますが、これは充たされぬ欲求をさらに高い形におきかえてこれを満足させるということを意味しております。〈長島〉愛生園において熱心で純粋な信仰生活が営まれ、美しい詩や深い思索が生まれ、隣人への愛情に充ちた行為が行われるのは、皆この昇華の例でもあると言えましょう。これは外部から来る私どもが深く打たれずにいられないところです … P185

… シューベルトのリートを口ずさみながら、ひとり山の小径を歩いていると、25年前、信州の高原でひとり療養していたころのような気がしてくる。天地の中にただひとり置かれ、自分もまた大地に生える草のひとつのように感じたあの頃と寸分もちがわない自分をみいだすのはふしぎではないか。四半世紀という歴史的時間。その間の生理的・社会的変動も、人間の精神の深奥に対しては、根本的に何の変化ももたらさないとは … P187

… 同じ条件のなかにいても、ある人は生きがいが感じられなくて悩み、ある人は生きる喜びにあふれている。このちがいはどこから来るのであろうか。性格の問題だとか、生活史や心の持ち方のちがいだとか、対人関係や社会生活のしくみを変えればだれでも生きがいを感じるようになるはずだなどと、いろいろ答は出されるであろう。ぞのひとつひとつに一面の真理があるにちがいないが、生きがいという大きな問題はあまりあっさり片付けてすむものではなさそうである … P196

3日続けての神谷美恵子氏に関する本で、

通訳よりも、翻訳家よりも、大学教授よりも、精神科医よりも、

一人の求道者を見たような思いです。

【生きがいの育て方:神谷美恵子東京研究会著】を読む

【生きがいの育て方】神谷美恵子東京研究会著:文化創作出版

前回、【こころの旅:神谷美恵子著】を読みました。

平易な表現の中にも、重厚さを感じました。

で、今回は、神谷美恵子東京研究会がまとめた【生きがいについて】文化創作出版(右写真)を読みました。

印象に残ったくだりを紹介します。

… 「やりたいからやる」という自発性をともなわないと、ほんとうのよろこびが生まれない。 … P45

… 万人がうらやむような高い地位にのぼっても、ありあまる富を所有しても、スター的存在になれるほどの美貌や才能を持っても、本人の心の中で生きるよろこびが感じられなければ、生きがいを持っているとはいえないわけです。現に私は、上に言ったような、はれやかなものを全部持っていながら、生きがいがなくて、ノイローゼになった患者さんを何年かにわたって診療したことがあります。 … P94

… よく発達した精神能力というのは、自分を見つめる反省能力を特徴とする。 … P199

… 暇というものはなくても困りますが、ありすぎると「退屈病」をおこしますし、これを善用することは難しく、かえって生きがいの喪失をひきおこすことになります。 … P200

… 変化や発展というものは、たえず旅行や探検に出たり、新しい流行を追ったりしなくてはえられないものであろうか。決してそうではない。 … … わざわざ外面的に変化の多い生活を求めなくても、じっと眺める眼、、こまかく感じとる心さえあれば、一生同じところで静かに暮らしていても、全然退屈しないでいられる。 … P201

今回は、5つのくだりを紹介しました。

最後のくだり〈P201〉が気になりました。

私は、定年退職後の2年9か月、ほとんど毎日の日中を、木立の中〈約5,000㎡〉で過ごしています。
新しい流行を追うこともなく、旅行や探検にも出ません。

※ 〈経済面、体力面等の〉事情が許す限り、今の生活を続けるつもりでいます。

で、それはそれでよいのですが、

” じっと眺める眼 ” ” 細かく感じとる心 ”

が、自分に備わっているのか気になったという次第です。

… … … 備えていきます。

【こころの旅:神谷美恵子著】を読む

【こころの旅】神谷美恵子著:日本評論社

【こころの旅】神谷美恵子著:日本評論社(右写真)を読んで印象に残ったくだりを紹介します。

① … 自発性によって独学能力と思考能力を身につけることが、一生のこころの旅をゆたかにするもっとも大切な鍵であろう。どこにおかれても一生ひとりで学びつづけられる人をつくるのが学校教育の目的であるとさえ私は思う。 … P78

② … 青年の多くは一時的に芸術家になるといえよう。この審美的傾向を人間が一生持ち続けられるならば「生きがい」の強敵の一つである「退屈病」からまぬがれることができるのに、どうもこれは例外に属することらしい。中年になると大部分の者は現実に密着する傾向がある。 … P102~103

③ … … 「自分は何ものであるか、自分はどこにどう立ち、これからどういう役割と目標にむかって歩いて行こうとするのか」をみきわめなくてはならないという。アイデンティティとは訳しにくいことばで自己同一性などと訳されてもあまりピンと来ないが、その意味する内容は上のカギかっこの中にある。  P108~109

④ … 生まれた以上、育てられた以上、自分に与えられた時間を精一杯生きてきた。その時間をできるだけ充実させ、他の人々も手をたずさえて、なるべく「よく」生きようとは努めてきた。しかし、自分の一生には多くの「若気の至り」やあやまちや、「もっとよくできたはず」のこともあるだろう。 … … 自分こそ、自分の一生が決して完全無欠なものではないことを知っている。 … … それにもかかわらず、今まで人間として生きることを許され、多くの力や人によって生かされてきた。生きる苦しみもあったが、また美しい自然やすぐれた人びとに出会うよろこびも味わわされた。そしてこれからも死ぬときまで許され、支えられて行くのだろう。 … P177

上記
①について
同感です。退職してからとくにそのことを強く感じました。
②について
審美的傾向を持っていれば、人生が彩られ、また、いっそう潤うようにも思います。
③について
アイデンティティ確立については、本の中では、思春期特有の課題として取り上げられていますが、
… 私の場合、定年退職後から今日に至るまでの課題でもあります。
④について
〈おこがましいのですが〉私もそのように思っています。
癒されました。ありがとうございます。

定年退職前後に、定年に関する本を数十冊読みました。

最初に【こころの旅】を読んでいれば、それらへの理解がより深まったように思われます。

「親死ぬ 子死ぬ 孫死ぬ」を思う 

息子夫婦と孫を見送った後で…令和二年正月五日 木立前にて

① … 昔、ある高僧のもとに年賀にやってきた男が、何か縁起の良いことを書いてほしいと頼んだそうである。それで僧がしたためた言葉は「親死に、子死に、孫死ぬ」。正月から不吉だと怒る男に僧いわく「いや、この順番ならばめでたい。逆になったらたいへんなことだ …
【2020.1.5付日本経済新聞第1面コラム欄 春秋】より

② … 一休宗純は、孫が生まれためでたい席で一筆書いてくれと頼まれ、「親死ぬ 子死ぬ 孫死ぬ」と書をしたため、何故こんな不吉なことを書くのかと責められたことがありました。しかし、一休に言わせると、親が、子が、孫がという順番で逝くことにこれ以上の幸せがあるだろうかと返しました。」 
【人生の結論:小池一夫著 朝日新書】 P228より

今朝、日経新聞のコラム欄〈上記①〉を読んでいると、昨年末に読んだ【人生の結論:小池一夫著 朝日新書】の中のあるくだり〈上記②〉が思い出されました。

※ 話の背景は若干異なっていますが、言わんとしていることは同じと捉え、二つ並べて載せました。

 

で、朝刊を読み終わってしばらくすると、プレハブ前に車の止まる音がしました。

帰省中の息子夫婦とその子ども〈私にとっては孫〉でした。

仕事場〈都会〉に戻るので、別れのあいさつに来たとのこと。

息子夫婦の若々しい屈託のない笑顔 … 。

そして、母親に抱かれ、満足しきった孫〈あと数日で満1歳〉 … 。

頭を撫でると、純粋そのものの表情としぐさで返事をしてくれました。

 

見送った後、木立前で、高僧の言葉を思いました。(右上写真)

【新農業時代:川内イオ著】を読む

【新農業時代】川内イオ著:文藝春秋

【新農業時代】川内イオ著:文藝春秋(右写真)から印象に残ったくだりを紹介します。

① … 人に任せればすぐに解決するようなこともありますけど、自分でやれば、いつかそこで得たスキルや知識、経験を活かすことができるかもしれない。僕はこの時間を『投資』だと思っているんです。 … P33~34

② … 考え方やきっかけ次第で、まだまだ伸びしろがある。日本の農業はポテンシャルの宝庫ですよ。 … P58

③ … 東京での仕事に戻った時に感じたのは、いくら飛び回って、どれだけ稼いでいても自分は、代替可能という現実だった。ほとんどの上司の目標は、アーリーリタイヤ。視点を変えれば、できるだけ早く辞めたいということだ。自分にとって一生続けたい仕事はなにかを問い続けた時、道は決まった。 … P102

④ … これから世界の人口が増えていくところはアジア、アフリカで、どちらの主食もコメです。これからの人口増、食糧問題を解決するカギはコメになるでしょう。 … P148

⑤ … おれは42歳の時に胆のうがんと肝臓がんになったんだ。ステージ4で末期がんだった。その時にわたしは一度死んだと思った。だから、治った時にこっから先の人生はより一層好きなことをしようと思った。それが良かったんよ。いつか必ずいける、そういう思いで20年やったんだ。 … P191

本書【新農業時代】は、著者の河内氏〈フリーライター〉が、革新的な農業に挑戦している10名の方の言動をまとめたものです。

彼らの発想や取り組みは、農業関係者だけでなく、それ以外の人たちにとっても大いに刺激やヒントになると思われます。

上記①,③,⑤からは、私自身、今後の生き方も学んだようにも思っています。