【老人たちの裏社会:新郷由起著】を読む

【老人たちの裏社会】新郷由起著:宝島社

今日も悪天候でした。

薪ストーブの傍らで、本を読む日が続いています。

【老人たちの裏社会】新郷由起著:宝島社(右写真)を読んで印象に残ったくだりを紹介します。

… 認知症でなくとも、脳は加齢により萎縮していきますが、脳内のネットワークがビッチリと鍛えられている人は多少縮んでも影響は少ない。また『かわいいおばあちゃんになりたい』など、老いについて自分なりの美学や目標がある人は円熟への努力を惜しみませんが、開き直ってしまうと ” 我 ” を通すことのみに執心して ” 地 ” だけが剥き出しになってしまう。人は世の中を知るにつれ、摩擦を避けて生きるようになるはずが、一部では他者へぶつかることでしか存在を示せない『不器用な老人』となる実態があります。 … P86~87
著者〈新郷氏〉が「あしかクリニック」戸狩伊世子院長の言葉より引用

… ほんのわずかな時代のズレや環境の変化で、持てはやされ、大事にされる人が万華鏡のように入れ替わる。未来永劫、安泰かつ保証される職業や生き方などない。時の流れとともに目まぐるしく変わる。 ” 花形の職業 ” がそれを何より物語っているではないか。老いた自分に果たして何が出来るのか、どれほど時代に求められるのか、一体誰にわかるというのか。 … P154

… 各々の自立した経済力、壁やドア1枚で守られるプライバシー、他人からの不干渉と無関心――どれも近代日本の社会が「豊かで快適な生活」のために希求し、叶えてきたものではなかったか。多々の理想を果たして、昨今の暮らしを築いたのではなかったか。皮肉にもそれらが、現代の孤立死を日々生み出し続けている。 … P180

本書は、著者〈新郷氏〉が現場に潜入取材し、老人たちの万引き、暴行、ストーカー等についてまとめたルポルタージュです。

著者が取材中に老人に絡まれそうになる場面もあり、リアル感大。

【感想】 … 他人事ではないですね …

【立て直す力:上田紀行著】を読む

【立て直す力】上田紀行著:中公新書ラクレ

【立て直す力】上田紀行著:中公新書ラクレ(右写真)より、印象に残ったくだりを紹介します。

… 自由と支えはコインの裏表です。自由に生きるためには、自分の中に絶対的な支えが必要なのです。私を支えてくれるものがあるというある種の確信のようなものが、人間の自由を支えるのです。人生が破綻しても、ひどく落ち込んで死にたくなったりしても、無条件に支えてくれる存在がある、ということが人生へのチャレンジを後押しするのです。 … P76

… … 常に、いまここにいるということの意義が未来の目的を達成するためなのだと、常に「目的への疎外」を経験することで、私たちはいまを楽しめなくなっていきます。いまアリとして生きていく、その目的を達成する生き方をすると、こころから楽しめる時間は非常に少なくなってしまうのです。 … P151

… 本来、人間というものはとてもフラジャイル〈fragile:壊れやすい〉な存在であること、傷つきやすいものだということを再認識してほしい。だから癒したり、ケアしたりする手段は必ず持っておかなければならないのです。 … … お金の計算と同じくらい大切なことです。つまり、エクストラ(特別)なものではなくてエッセンシャル(必須)なものなのです。 … P158~159

… 智〈知恵〉は悲〈慈悲〉に属して動かなくてはならぬ。智は悲によってその力を持つのだということに気づかなくてはならぬ。ほんとうの自由はここから生まれて出る。 … P205
著者〈上田氏〉が鈴木大拙の言葉より引用

著者:上田紀行氏について
・文化人類学者,医学博士,東京工業大学教授,リベラルアーツ研究教育院長
・86年よりスリランカで「悪魔祓い」のフィールドワークをおこない、その後「癒し」の観点を提示するとともに現代社会への提言を続けている。

【世界のニュースを日本人は何も知らない:谷本真由美著】を読む

【世界のニュースを日本人は何も知らない】谷本真由美著:ワニブックスPLUS新書

【世界のニュースを日本人は何も知らない】谷本真由美著:ワニブックスPLUS新書(右写真)より、印象に残ったくだりを紹介します。

… 日本人は「長いものには巻かれろ」体質の人が多く、自分の人生にシビアな目を持って向き合わず、危機感を抱くことがない。実はこれがもっとも憂慮すべきことかもしれません。 … … 自身の雇用というきわめて重要なことに対して受け身の日本人には、年金や社会保障、日本経済が置かれている状況にも無関心で、このままでなんとかなるだろうという恐ろしく楽観的な意識を持っている人が多いのです。 … P28~29

… ネットの発達で場所を選ばず仕事ができるようになっても、やはり有利な情報を得るには人に会う必要がありますし、協力相手を探すにも人とコミュニケーションを取ることが重要になります。また飲み会などインフォーマルな場での人付き合いがビジネスのアイデアを活性化させることもあるでしょう。 … P144

… … 近年ほかの国では、成功にとって必要なのは詰め込み型の勉強ではなく「非認知能力」だという考え方が一般的になりつつあります。非認知能力とは他人の気持ちを汲んだり、人の境遇や気持ちに共感したり、異なる価値観を柔軟に受け止めたり、我慢をしたり、人に譲ったり……等々、そんな生きていくうえで必要な社会的スキルのことをいいます。 … P175~176

… 日本のサラリーマンや学生の中には普段の生活でうつ病になってしまう人が多くいますが、これは自分の創造性を発揮できなかったり意思決定権がなかったりすることと深く関係するわけです。 … P189

著者〈谷本氏〉は元国連専門機関職員であり、また、日本、イギリス、アメリカ、イタリアなどでの就労経験もあり、それぞれの国の有様を日本と対比させながら具体的に紹介しています。

日々狭い範囲内〈自宅と0,5haの木立〉で生活している私にとって、とても刺激になりました。

【すべては「好き嫌い」から始まる:楠木建著】を読む

【すべては「好き嫌い」から始まる】楠木建著:文藝春秋

【すべては「好き嫌い」から始まる】楠木建著:文藝春秋(右写真)を読みました。

印象に残ったくだりを紹介します。

… 未知のことについては、それが未知であるほど、事前にあれこれ考えずに「ま、とりあえずやってみるか……」という姿勢で生活している。10時間の想像よりも1分の実体験。これが僕の結論だ。 … P64

… 成熟には時間がかかる。時間をかけて経験を積み重ねるしかない。どんなにカネをかけても、若者は一足飛びに成熟した大人にはなれない。カネを出してもすぐには手に入らないもの。それがもっとも有効な差別化の次元となる。 … P129

… 自分の好きなこと、自分で面白いと思う仕事でフルスイングする。これは仕事に対する構えの王道だと思う。 … P167

… 言葉は言葉、説明は説明、約束は約束……なにもとりたてて言うべきことはない。だが、実績は実在であり、実績のみが実在である。 —―これがビジネスの不易の大原則だと私は思う。実績のみが、きみの自信、能力、そして勇気の最良の尺度だ。実績のみが、きみ自身として成長する自由をきみに与えてくれる。覚えておきたまえ。—―実績こそ君の実在だ。ほかのことはどうでもいい。 … P227
(『プロフェッショナルマネージャー』ハロルド・ジェニーン〈米国企業ITTの50年ほど前の経営者〉著)より楠木氏が引用

… 一人ひとりが自分の好き嫌いを基軸に思考し、判断し、行動し、生活をする。好き嫌いは人それぞれ。他人と自分が違うのは当たり前。人の好き嫌いにとやかく言わず、気持ちよく放置し、尊重する。繰り返しになるが、これこそが個人と社会の成熟であり、豊かな社会だと僕は考えている。 … P317

 

楠木建 … … 、 どこかで聞いたような見たような … ?

そう、今年の5月の日経新聞の書評欄『半歩遅れの読書術』を執筆なされた方でした。

それら〈毎週土曜の4回分〉を大学ノートに切り貼りしてあるのですが、文章のいたるところ、太い赤線だらけです。

今回の【すべては「好き嫌い」から始まる】の本も、そのようになってしまいました。

『秋の日は釣瓶落し』をつくづく感じました

日が西に傾くともう夕暮れです

朝、ブログ記事の投稿をし、新聞を読んでいると、親戚がナメコ採りにやって来ました。

原木からたくさんのナメコが出ているのを見て、驚くというより感動していました。
〈私も最初はそうでした〉

大収穫で満足そうでした。

親戚が帰った後、イノシシから米を守るために設置してあった電気柵の撤去作業に行きました。

10人ほどで、電線やバッテリー等を片付けました。

それらは雪に埋もれると破損しますので、雪が降る前に片付けたという次第です。

で、作業を終えて帰って来ると、〈午前〉11時を過ぎていました。

早めに昼食をとり、瓦礫を石やコンクリートなどに分別する作業に取りかかりました。
〈まだ分別作業が終わっていないのです〉

今日のうちに終わりたく作業を進めていると、町会長さんから急用を頼まれました。

それを終えると、日はもう西に傾いていました。

急ピッチで作業をしましたが、あっという間に夕暮時になってしまいました。(右上写真)

分別を完了できませんでした。

『秋の日は釣瓶〈つるべ〉落し』をつくづく感じました。

※ 秋の日は釣瓶落し
… 秋の日の沈むのが早いことをいう … 広辞苑第六版より

これから3週間ほどは、一年のうちで最も日の沈むのが早い時節となります。

テキパキと行動し、明るいうちに作業を終えてしまいたいと思っているのですが … 。