【この先をどう生きるか:藤原智美著】を読む

【この先をどう生きるか】藤原智美著:文藝春秋

【この先をどう生きるか ~暴走老人から幸福老人へ~】藤原智美著:文芸春秋(右写真)を読みました。

… 〈リタイア後の生き方では〉目的を捨てて行動にのみこだわるということです。言い方を変えると、目的に価値を見出すのではなく、行動に価値を見出すということです。 …P77

… 現代の老人がかつての老人と大きく異なるのは、メディアを通して作り上げられた老人の模範像に自分をあわせようと、悪戦苦闘しているところです。 … P113

… 定年退職するというのは群れを失うことであり、たんに仕事をしなくて楽になるといった単純な人生の転換点ではないのです。これから新たに帰属できる群れを探すか、あるいは自分でつくるか、はたまた個人として「あなたの人生」を強く歩んでいくのか、いくつかの選択を迫られるターニングポイントなのです。 … P119

… 学校や職場、サークルや地域の仲間の間で、自分はどのようにふるまってきたか。だれと競争し、だれと自分を比べ、どんな同調を繰り返してきたか、思い出す必要があります。 … … 今のあなたはもうそんな必要のない時間を手に入れたということを自分に理解させるのです。過去の自分をしっかりふり返ることが、新しい自分をつくる上で必要です。 … P131

… 孤独のなかでは、「書くこと」で自分とのつながりをはかり、持続的な自己対話をはかること。 … P162

… リタイア後に、そのルーティーンがなくなり、毎朝やることが気分によってばらばらで適当になるということがあるかもしれません。それはせっかく身についていた無意識に行っている日々のセルフ・ケアを手放す、じつにもったいないことでもあります。 … P180

藤原氏の著書では、定年退職後の私自身の思いやふるまいに重なる箇所が多々見受けられ、おこがましくも紹介させていただきました。

厳密には ” 自尊心 ” と書くべきでした

【エリック・ホッファー 自分を愛する100の言葉 「働く哲学者」の人生論】小川仁志著:PHP

帰省していた息子を駅まで送って行きました。

帰り道本屋に立ち寄ると、【エリック・ホッファー 自分を愛する100の言葉 「働く哲学者」の人生論】小川仁志著:PHP(右写真)がありましたので、買ってきました。

※ 昨年の秋に発行

134ページに
… 自尊心が自身の潜在能力と業績から引き出されるのに対して、プライドはもともと我々の一部でないものから引き出される価値の感覚である。架空の自己、指導者、聖なる大義、集団的な組織や財産に自分自身を一体化させるときに、我々はプライドを感じる。 …
『The Passionate State of Mind』
とあり、この件について
著者の小川仁志氏(哲学者)が、
… ホッファーは、自尊心とプライドを区別します。自尊心は自分の内側から生じるもので、プライドは外から生じるもの。つまり、自分が何かを一生懸命やってきたとします。そうすれば、必然的に自分はこれだけのことをやったんだという自尊心が涌くでしょう。
当然それは強靭なものといえます。いわば飾りでも作り物でもない、本当の自分です。反対にプライドのほうは、自分に何もないから、不安に駆られて外から力を借りてくるのです。架空の自己、指導者、聖なる大義、集団的な組織や財産といったものから。 … …
と解説しています。

私は、前々回のブログ記事で、エリック・ホッファーは、” 誇り ” を大切にしていると書きました。

厳密には、” 自尊心 ” と書くべきでした。

エリック・ホッファー 自分を愛する100の言葉 「働く哲学者」の人生論

『半歩遅れの読書術』が川本三郎氏にも

【物語の向こうに時代が見える】川本三郎著:春秋社

… 誰にでも大人になったら忘れてしまう「本来の自分」がいるのではないだろうか。それは消えてしまうことなく、心の隅に座ってずっと見守ってくれるものだと思う。大人になって身につけた行動や話し方は身を守る鎧のようなものだ。武装を解いて「本来の自分」に立ち返ると、心は元気を取り戻す。 …
〈2.9付日経新聞30面『半歩遅れの読書術』絲山秋子(小説家)著〉より

あまりにうまい言い方なので、絲山氏のことを知りたく、ネットで調べました。
〈絲山氏を知らなかった自分が恥ずかしい! もっと読まないと!〉

絲山氏の著書を近いうちに買いたいと思います。

一昨日は『サピエンス全史』を読み終え、昨日は『エリック・ホッファー自伝』と、翻訳ものが続いたので、今日は日本のものを読みたくなりました。

※ ここ3日間悪天候ですので、主に室内で読書をしています。

で、前々から読もうと思っていた【物語の向こうに時代が見える】川本三郎著:春秋社(右上写真)を読むことにしました。

目次を見ると、” 寂れゆく地方の町こそを描く ” という文字が目に入ってきました。

… 寂れゆく地方の町 … 私の住んでいるところもそうですので、まずその箇所を開いてみました。

な! なんと! そこ〈P106〉に ” 絲山秋子 ” の名前があるではありませんか。
〈絲山氏を知らなかった恥ずかしい自分を再認識〉

絲山氏は名前と作品名だけで、実際に紹介されていたのは、桜木紫乃氏のものでした。

その桜木氏の作品を、川本氏が優しく確かな眼差しで見ています。

… 桜木紫乃は、その衰退していく故郷の北海道に腰を据え、寂しさと闘いながら生きる人々に焦点を当てる。
無論、大上段に振りかぶった政治批判はしない。政治や経済の言葉ではとらえきれない人々の哀歓を彼らと共にあろうとするように優しく、切なく描き込んでゆく。 … P107

” 大上段に振りかぶった政治批判はしない。政治や経済の言葉ではとらえきれない人々の哀歓を彼らと共にあろうとするように優しく … … ” は、川本氏自身の姿勢のようにも読めました。

物語の向こうに時代が見える   旅先でビール   ひとり居の記   ばかもの (新潮文庫)   氷平線 (文春文庫)

【エリック・ホッファー自伝】を読む

【エリック・ホッファー自伝】中本義彦訳:作品社

【エリック・ホッファー自伝】中本義彦訳:作品社(右写真)を読みました。

… 私はつましく暮らし、絶え間なく読書をしながら、 … … 勉強をはじめた。自分の記憶を助けるためにノートをとる習慣も身につけ、言葉を使って物事を描き出すことに熱中し、適切な形容詞を探すのに何時間も費やしたりしていた。 … P17

… 私は概して堕落しやすく、そうであるからこそ誘惑を避けることを学ばねばならなかった。 … P20

… もしこのまま彼女たちと暮らせば、一時の平和も見出せないだろうと思った。私は一刻も早く行動を起こして、放浪生活に戻らなければならなくなった。 … P111

… ある晩、 … … 鏡に映った自分の顔にはっとした。やつれて見えたのだ。私はためらうことなく仕事を辞めることにし、すぐ寝袋をとって、 … … 給料をもらいに行った。 … … 〈その〉金がなくなるまでの2週間あまり、人生は御伽噺のように思えた。貨幣の発明の重大さを悟ったのだ。それは人間性の進歩、つまり自由と平等の出現にとって欠かせない一歩である。 … P145〜146

… 私はこれまでの人生で不満を抱いたことは一度もない。世界は分不相応に私を大事に扱ってくれていると、いつもそう思ってきた。 … P153

… 人びとが1日6時間だけ働き、その後に自分が本当にやりたいことをやれるようになれば、いわゆる引退の意味はなくなります。それまでやってきたことに費やせる時間が多くなるだけだからです。 … P168

穏やかな書きぶりの中にも、”向学心” ”自由”  ”平等” ”誇り”  ”勇気” といったホッファー氏のとても大切にしているものががひしひしと伝わってきました。

『エリック・ホッファー』〈1902〜83〉
・ニューヨークのブロンクスにドイツ移民の子として生まれる。
・7歳のときに失明し、15歳のときに突然視力が回復。
・正規の学校教育を一切受けていない。
・18歳で天涯孤独になった後、職を転々とし、働きながら読書と思索を続け、独自の思想を築き上げる。

エリック・ホッファー自伝―構想された真実   波止場日記――労働と思索 (始まりの本)   魂の錬金術―エリック・ホッファー全アフォリズム集   この先をどう生きるか 暴走老人から幸福老人へ

【サピエンス全史 ユバァル・ノア・ハラリ著】を読む

【サピエンス全史 上】ユバァル・ノア・ハラリ著 柴田裕之訳:河出書房新社
【サピエンス全史 下】ユバァル・ノア・ハラリ著 柴田裕之訳:河出書房新社

【サピエンス全史 上下】ユバァル・ノア・ハラリ著 柴田裕之訳:河出書房新社(右上・右下写真)を読みました。

人類が初めて姿を現した250万年前から現在までの歴史が、グローバルな視点で書かれています。

平易な言葉をつかい、適切でわかりやすい例がいたるところに盛り込まれていますので、大著であるにもかかわらず、飽きることなく最後まで読めました。

著者は、サピエンス〈現生人類〉がどのように今日まで生き延び、そして、地球の覇者になったのかについて、【認知革命】【農業革命】【科学革命】の3つの視点から述べています。

【認知革命】
約7万年前、虚構〈伝説や神話、神々、宗教〉を生み出し、それを共有する者なら誰もが柔軟に協働する能力を獲得した。

【農業革命】
約1万年前、それまで狩猟採集をしながら小集団で暮らしていたサピエンスが農業をするようになった。
定住もはじまり、統合への道を歩み始めた。
農耕によって単位面積当たりに暮らせる人の数が爆発的に増えた。

【科学革命】
約500年前、無知を認めた上で、新しい知識の獲得を目指すようになった。
その目的を達するために、観察結果を収集し、数学的ツールを用いてそれらの観察結果を結び付け、包括的な説にまとめ上げてそれを生活にも応用するようになった。

とくに【認知革命】の視点から人類の歴史を捉えていることに、目から鱗が落ちる思いがしました。

また、著者の歴史書の特徴は、以下の件〈くだり〉にあると思います。

… 歴史書のほとんどは、偉大な思想家の考えや、戦士たちの勇敢さ、聖人たちの慈愛に満ちた行い、芸術家の創造性に注目する。彼らには、社会構造の形成と解体、帝国の勃興と滅亡、テクノロジーの発見と伝播についても、語るべきことが多々ある。だが、彼らは、それらが各人の幸せや苦しみにどのような影響を与えたのかについては、何一つ言及していない。これは、人類の歴史理解にとって最大の欠落と言える。私たちは、この欠落を埋める努力を始めるべきだろう。 … 下巻 P240

そして、最後の章〈第20章〉では、サピエンスの今後について、著者の豊かな発想や識見を見ることができます。

そこ〈第20章〉を読んでいたとき、ふと私が中2のときに行った大阪万博〈1970〉のテーマ … 人類の進歩と調和 … を思い出しました。

今回【サピエンス全史】を読んだことにより、… 人類の進歩と調和 … の意味について、これからもずっと考え続けていく必要があることを強く感じました。

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福   サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福